月経のたびの頭痛を、証で読み分ける
外来の一場面です。「生理の前後になると決まって頭が痛くなる」という女性。鎮痛薬でしのいでいるが、効きが悪い月もある。月経関連頭痛や月経(月経前)片頭痛は珍しくなく、ホルモン変動が背景にありますが、漢方では月経周期に連動する頭痛を証の変化として捉え、鎮痛薬に重ねる一手を選べます。
その前に除外です。突然の激しい頭痛、神経脱落症状、発熱・項部硬直、経過中に増悪する頭痛は、くも膜下出血・髄膜炎・脳腫瘍などの二次性頭痛を疑い、まず器質疾患を除外します。危険信号のない反復性の頭痛を、証で読みます。読む軸は、月経と結びつく瘀血、天候・むくみと結びつく水滞、のぼせ・立ちくらみと結びつく気逆です。
① のぼせ・肩こり・経血の塊を伴う → 桂枝茯苓丸
月経前後に頭痛が強まり、のぼせ・肩こり・経血の塊、下腹部の圧痛など瘀血の腹候を伴う。血の滞りが頭に及ぶ像で、中間〜実証の瘀血として桂枝茯苓丸を考えます。月経周期との連動がはっきりしているほど瘀血を疑います。
② 頭重・めまい・悪心があり天気で悪化 → 五苓散
締めつけるより重い頭痛で、めまい・悪心を伴い、雨や低気圧で悪化する。口渇があるのに尿量が少ない――これは水滞(水毒)の像で、水を捌く五苓散が向きます。いわゆる「天気痛」と重なるタイプです。
③ 立ちくらみ・動悸・のぼせを伴う → 苓桂朮甘湯
立ちくらみやふらつき、動悸、のぼせを伴い、頭痛とめまいが一体の訴え。水の上衝に気逆が絡む像には苓桂朮甘湯を考えます。②③はいずれも水が関わりますが、③はのぼせ・動悸という気の上衝が前景です。
④ 冷えると悪化・嘔吐を伴い反復する片頭痛 → 呉茱萸湯
冷えると悪化し、悪心・嘔吐を伴って繰り返す発作性の頭痛。手足が冷え、うずくまるほどの片頭痛には呉茱萸湯が候補です。反復性・冷え・嘔吐が揃うのが目印です。
月経周期との連動を手がかりにする
問診では、頭痛が月経周期のどこで起こるかを必ず聞きます。月経直前〜開始期に強まり、のぼせ・肩こり・経血の塊を伴うなら瘀血の色が濃く、桂枝茯苓丸が視野に入ります。むくみやすい時期に頭重・めまいが重なるなら水滞で、五苓散・苓桂朮甘湯へ。周期との連動は、証を絞り込む有力な手がかりになります。基礎体温表や頭痛ダイアリーを併用すると、連動がより明確になります。
まとめと注意
同じ月経関連頭痛でも、瘀血なら桂枝茯苓丸、水滞なら五苓散、水の上衝+気逆なら苓桂朮甘湯、冷えて反復する片頭痛なら呉茱萸湯と、証で分かれます。くり返しますが、突然の激しい頭痛や神経症状を伴う頭痛は二次性頭痛の除外が最優先です。妊娠の可能性がある場合、桂枝茯苓丸(桃仁・牡丹皮を含む)は可能性を確認してから用います。また、苓桂朮甘湯は甘草を含むため、連用の際は偽アルドステロン症(血圧上昇・低カリウム血症・浮腫)に留意します。妊娠期については、五苓散は妊娠期にも比較的用いられる部類とされ、苓桂朮甘湯・呉茱萸湯も妊娠中に特に注意される生薬は含まないとされますが、妊娠期・授乳期の使用可否はいずれも個別に主治医が判断します。
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